hirausan

死ぬまでにやったこと

気軽にできそうと思える起業のはなし

バイトに行きたくないという理由で自分一人でできそうな事業を起こして、わたわたとしてたらおよそ5年が経ち、今や従業員はおよそ120人いる。売上高でいうと5〜6億円程度の規模でまだまだ小さい。雨が降れば散り散りになって溶けてゆくトイレットペーパーのように脆くはあるがなんとか今日まで生きている。

 

会社をはじめた体験を通じて感じたあれこれを偉そうに書きます。少しでも役に立てばとても嬉しいです。

 

失敗して当たり前らしい

有名な話だが設立した1年以内に40%の会社が倒産あるいは解散している。ちなみに5年だと85%が潰れている。自分は不安症なのでこの数字がとても怖かったが、営業マンの要らないWEBベースのビジネスだったこともあって、運良くサービスインの月から黒字だった。大きい貸倒れに見舞われることもなくキャッシュフローに困ったこともない。良くも悪くも無借金経営でもあるので個人的にはこの生存率の値についてはピンとこなかったりする。失敗してお金はなくなったとしても命まで取られる事はないのだから(魂は取られるかもしれないが)後ろは振り向かずに臨むのが良いと思う。従業員を多く雇うくらいの軌道に乗るまでは楽しむことだけを考えたほうがうまくいく気がする。当たれば大きいのだから外れたとしても試行回数を増やせばよいはずだ。失敗したら知人達に陰で笑われるかもしれないけど日本という国での失敗した人間に対する反応はいつだってそういうものだ。だけど挑戦した人間は偉いという価値観だけは万国共通だから安心すれば良い。そう言ったものの全然カスリもしないレベルなら才能がないと思って諦めて他のこと、たとえばバス釣りとかを楽しもう。

 

目的と手段を間違えない

よく目にするのは、ただ起業がしたいとか、ただ社長になりたいとか思ってる人。この手の人達は人に雇われたくないとか虚栄心を満たしたいだけなので全く向いていない。社長という役職で呼ばれ、人間扱いしてもらえないことで悲しくなるくらいが丁度良い。起業は何かを行うために仕方なく行うものだ。誰も知らない小さな会社の社長なんて社会的地位はフリーターと大きくは変わらないので、それを満たすことなんてできるはずがない。外に出ればわかることだが大手の平社員よりも立場はずっと低いし舐められることも多い。合コンのウケは行ったことないからしらない。

  

思いついたら最小構成ですぐに

試算してうまくいきそうなら一刻も早く行動した方が良い。粗利が極端な数字でなければそれで良いと思う。販売費及び一般管理費が占めるウェイトは小さくないが、後でしっかり効率化すればなんとかなるだろう。ましてや事業計画書なんてもっての外だ。作るだけ毒だ。あれこれ考えて悩んでいると今の生活のままでも良いかもと次第にどうでもよくなってくるものだ。僕の場合は仕入れ先を探しながらWEB作って請求書発行と受注管理のシステムを作っただけでその間は2週間だった。これが3ヶ月とかだったら途中で小難しい勉強に手を出してしまい魂が抜けていただろう。完成度はあまり求めず不格好でもいいからスタートさせる事だけを考えるのが良い。動機の維持が最も大事だ。会社法や設立方法、会計は小難しいので無視するべきだと思う。資本金なんて後で増資すれば良いし(利益剰余金の組み入れも04年の新会社法で合法になった)、個人事業主で問題なければ設立なんかはうまくいってからでよい。それだって行政書士に頼めばいいし、会計は税理士に頼めばいい。B/SやP/LやC/Fなんか読み方はおろか存在すら暫く知らないままで良い。アルファベット・スラッシュ・アルファベットの文字列を見たらすぐ目を瞑って夕飯のこととか考えて忘れたほうがいい。大事なのはビジネスが成立するかどうかを確かめることだ。どうせその後は嫌でも知らなくてはならないのだから。

 

友人と起業するのはダメなのか

起業指南とかその類のTIPSを読むと、書いた人のトラウマが意思を持って溢れだしてる程に「絶対するなよ!死ぬぞ!」といったことが書かれてある。確かに友人が多いと過剰に気を遣ってしまうし解雇もしづらくなるだろう。排他的な意味も含めて村社会になりやすい。従業員側にも少々の事では解雇されないだろうなみたいな甘えだってきっとある。会社の方針を納得するまで話したりしないといけなくなったりするので余計なコミュニケーションコストが生じてしまう。……とはいったものの、僕は創業時に限って言えば、そこまで駄目だとは思っていない。友人を巻き込んで起業して良かったと思う点は沢山あった。「俺たちだけでスゴいことやってる」といった楽しさを共有できたことだってプラスに働いた。それにたった一人で今があるかと問われれば自信は無い。精神は崩壊し肉体はドロドロに溶けていただろう。自分の右腕で極めて優秀だったスタッフは僕と滅茶苦茶喧嘩して去っていったので判断は微妙に揺らぐがやはり友人の存在は心強かった。もちろん、問題が起こる前に対策を検討しておくべきだ。僕はバンド時代に練習場であった京大の自治寮でとある会議によく出席していて横社会における意思決定の難しさを痛感し既に理解していた。極めて早い段階で友人とは友人を辞めて縦の関係を新たに作り、甘えを双方取り除くことに尽力した。しかしそのあと友人を延べ40人ほど雇用した引き換えに、世界はどんどん狭くなり、とても孤独になってしまったので星1つ。

 

経営者が作業をしてはいけないのか

真面目な人がよくやる勘違いで、自分がやったほうが早くて安心というやつだ。これは病気に近いもので僕は真面目とはいい難い人間だけど最初の2年ほど患っていて治療には困難を極めた。会社を大きくするためにいるのだから目先の達成感の為に動いてはいけない。ましてや自分の頑張りや苦労をひけらかして従業員にも同じよう働きを促すことだって間違いだ。小規模だと成り立つがいずれスケールしたら簡単に崩壊してしまうだろう。たとえ自分が突然死んでも会社は変わらず運営される環境でないといけない。

と言った話はすべて、うまくいってからの話。創業時なら話は別だ。全部一人でやって良い。自分がやりがいを感じてもプラスに働くのは僅かなこの期間だけだ。気持よく楽しくやってよいと思う。

 

会社の貯金は自分のものか

オーナー社長であれば株主でもあるので内部留保は自分のものでもある。そこに目が眩むくらいならそこまでの会社だったとして勝手に総取りすれば良いし誰も文句は言えない。会社(自分)に投資していただけだ。投資先として不的確なら売ったほうがもちろん賢い。この先、会社を成長させるのかどうするのかを考えれば良いだけだ。

 

 起業と幸福はあまり近い距離にない

現状はお金がないから不幸だと思っていて、沢山のお金があれば幸せだろうと考えてる人はきっと幸せにはなれないのだと思う。買い物は好きだったはずの僕でも物を買っても全く嬉しくないし、なんだか後ろめたい気持ちのほうが大きい。大体生活レベルが上がったところですぐに慣れて喪失の不安ばかりが大きくなるもんだ。お金だけじゃない、経営者は孤独だ。本当に孤独だ。そもそも雇用者と被雇用者は常に対立する構造であってそれを理解していないといけない。「うちの社員はみんな家族だと思っています」みたいなことを言っている経営者を時折に見かけるが、本気でそう思ってるのか首を傾げてしまう。「家族だったら血を吐くのは当たり前だよね?」といったムードを作る為かと疑ってしまう。詭弁極まりないとしか思えない。幸せになるための手段なら他に沢山あるはずだ。自分が考えたビジネスを世の中にぶつけてかき乱したいとかいった気持ちが無ければ続けるのはなかなか辛いのだと思う。僕の場合はすぐ現状に飽きるし刺激が無いと生きている心地がしないのでなんとか前を向いて続けられている。ちなみに自分が起業によって幸福になったと思ったことは今のところ一度もないし事業なんかにそれを期待していない。

 

まとめ

ビジネスの性質にもよるんだけど、スタートアップ時はただのビジネスの見極めだと思うことをお勧めします。最小の投資でシンプルにするべきです。うまくいきそうな手応えがあればそこからがやっと本当のスタート、腕の見せどころです。どうでしょうか、偉そうに書いてしまいましたがこうして見ると意外と簡単な気持ちでできそうな気がしませんか。 

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