hirausan

死ぬまでにやったこと

犬買った

自分の世話すら満足にできないのに犬の世話とか大変だろうなあと心配だったんだけど、結論からいうとこれが大して問題にならなかった。よかった。随分思い切ったものだなと我ながら思うがまあよかった。


生後50日くらいで迎え入れたのだけれど、むちゃくちゃ鳴く。大型犬とはいえ子犬は不快の要素を抽出しておきましたみたいな音を出す。そんなに泣き叫んだら喉がぶっ壊れるんじゃないかって心配になるくらい鳴く。初日はほとんど眠れず、嗚咽犬だと思って憂鬱だったのだけれどこれも次第に収まる。しかしいつ止むのかわからないのは結構つらく、人間の赤ちゃんならあやして静かにさせるもんだけど、犬はそう上手くいかない。吠えたら構ってくれると条件付けされるので徹底的に無視しなければならないそうだ。無視は誰だってつらいしきっと犬もつらいが仕様だから仕方ない。僕の場合は犬が吠えたら外に出て、タバコ吸って時間つぶして静かそうだったら戻って褒めるを繰り返したら数日で無音になった。よかった。


また子犬は糞便をランダムに撒き散らすルンバみたいなものなので犬自身もあっという間に糞便まみれになる。はじめはスカトロ犬かと思ってこれから大変だなあとか思ってたんだけれど、すでに収まったところをみるとそうではなかったようでよかった。とはいえ、はじめのうちは毎日にようにトイレ掃除と犬磨きをする必要があってトイレ掃除というと最高にだるいんだけど、まだ目新しくみえる犬を磨いたり風呂で遊んだりするのは楽しいから総合的に苦痛と感じなかったりする。しかも糞便は笑うほど臭いので、あとでやるみたいな面倒臭さを醸成する期間を与えてくれない点も良い。よかった。


そしてとにかく破壊する。生後50日なんて殴ったら一発で死にそうな身体をしているのに、何度殴っても壊れないようなものでも簡単に噛んで引っ張って壊す。壊されて困る物を遠ざけたりしていると、いつのまにか隠すためにきちんと収納するようになりみるみると部屋が片付いてくる。やがては毎日出して使うものでも、使ったら収納する癖までついてくるし、些細なことに不便を感じて収納用品とか探したりして気づけば掃除用具まで買って、犬とは関係ない風呂の鏡を磨いたりとかしてる。破壊癖は2歳位まで治らないらしいのだけれど、むしろ2年間この暮らしを続けていれば掃除がずいぶん無意識にできるようになる気がする。


多動の人間というものは普段からソワソワしているので落ち着くことをまるで知らない、というより落ち着き方がわからないといったほうが正確か。喫茶店とかでもコーヒーをゴクゴク飲んで立ち食いそばのようにいそいそと退店しがちである。しかし荒れてた犬が急速に穏やかになり、ノイローゼ気味だった精神が急に弛緩することで、穏やかな過ごしかたが少しわかってくるというか、穏やかであることが良いものだと思ってくる。するとお茶とか淹れだす。ほっこりしながら犬を撫でたりする。そんなことしているとやはり退屈になって再びソワソワするわけだが、すると不思議と今度は犬が人間が食うものを食うところとかが見たくなってくる。したがって人はスーパーに足を運ぶようになる。犬に食わせるためにトマトとか買ってまず自分が食べてからお前もいるか?みたいなやつとかやってしまう。これは楽しい。楽しいんだけどトマトとか食うとこ見ててもすぐ飽きてもっと豪快に食うとこが見たくなる。したがって肉とか買うようになる。肉を買うと自分が食べたくなるのが自然な反応である。自分の飯に興味が湧いてきてレシピとか色々調べる。そして人は米を炊く。


だいたい宅配ピザしか食わなかったり、サトウのごはんしか調理できなかった自分がわずか一カ月で料理を作り、洗い物をしたり掃除をしたりしてる。犬を育てていると思ってたらどうやら自分が育っていたようだ。

というわけで、たぶん駄目な人のほうが向いてるんじゃないかって話。


12才の猫を飼ってるんだけどこれまた犬は全然違う。設計思想がまるで異なる。猫は自律型の湯たんぽみたいなもので寝るときに触るくらいで基本的に相手しないし、向こうだって相手にしてくれない。しかし犬は違う、ものすごい勢いかまってくる。夜中、目が覚めてお茶飲もうとしたりするだけでも遊んでくれってせがんでくるのでそのまま散歩行ったりするようになる。このおれが……。



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